国産とパーソナライズ

英国人のリサーチャーは日本のモバイル検索が進んでいると信じて来日してきた。しかし、ネットの世界を見る限りでは検索の領域では日本はグーグルに完敗しているようにも見える。たしかに、日本はモバイルインターネットを使う量は欧米を凌駕している。10代のPC利用者が減り始めているとも言われだした。人口全体が減っていることが大きな理由ではあろうが、若者はケータイですべてを済ますことができるようだ。娘を見ていると、PCも使うがケータイで用事を済ますことのほうが多そうだ。受験であった息子にPC禁止令をだすと、彼は密かに部屋にこもりケータイでネットの世界に入っていた。これだけ使われているのであれば、モバイル検索が欧米に比べ進んでいると言われるのも、もっとも。特に、ここ最近、モバイル検索では、ヤフー、グーグルに続き3位につけるfroute(エフルート)は、着うた、画像、動画をはじめ、現在地に連動したクーポンや地図などモバイルコンテンツに関するさまざまな検索をそろえている。

現状はさておき、「モバイル検索の先進国である日本の今後のトレンドはどうなるのか?」。ひと通りは調べてみる。ついでに、こんな本も読んでみる。

ウェブ国産力―日の丸ITが世界を制す (アスキー新書 047)

ウェブ国産力―日の丸ITが世界を制す (アスキー新書 047)

この本によれば、日本の検索技術は、グーグル以前、欧米に先駆けていたという。いまでも、要素技術では欧米に勝るらしい。それが、グーグル出現後は全く地味な存在に追いやられ、いまでは「情報大航海プロジェクト」として、国が予算までつけて、世にだすための後押しを始めている。

検索が向かう先はパーソナライズ化とある。そのパーソナライズ化を進めて行くためには、ケータイのように、肌身離さず持ち歩き、ネットに接続できるデバイスが最適らしい。KDDIの研究所ではライフログと呼び、ドコモの研究所ではマイライフアシストサービスと呼び、個人の行動すべてを記録し、個人にあった情報を提供し、状況に応じたリコメンデーションすることを目指している。

問題は個人情報の取り扱い。この個人情報をネットにアップロードし記録しておくのは良いが、その記録や整理・加工を「誰」が行い、どう使うのか。自分のためだけに利用するのであれば良いが、その人に適した広告配信と称して、ケータイ事業者が、こんなことを始めると、いろいろと議論はありそうだ。PCネットの世界では、グーグルが世界中のあらゆる情報を把握し「神」の存在になってしまうと恐れられる。ケータイ会社がグーグルに置き換わるとすれば、それと同じ議論が起きる。そんなケータイに抵抗感を持つ人も多かろう。個人の「同意」があれば良いで済みそうに無い。

この本には、ネットに全ての情報を送るから、そのような個人情報の問題が生じるのであり、ケータイ端末のクライアント機能として、その個人の行動履歴をケータイ端末のなかに保存しておき、それに基づくリコメンデーションを行えば解決できるというドコモの研究者の意見が述べられている。そのケータイ端末のクライアント側に有していない情報があるときにだけ、ネット側に聞きにいくというアイデアだ。

これは良いアイデアのようにも思える。そもそも、何でもかんでもグーグルに送り込む必要はなかろう。グーグルのデスクトップはかなり便利だが、自分のPCの中味をすべてグーグルに吸い取られずに、このPCのなかだけでも同じことはできそうなものだ。

そうしないと、グーグルの検索ボックスを持つドコモやauのケータイの情報まで含む、日本中すべての情報が米国に送り続けられる。グーグルの検索ボックスを採用した欧州のケータイ会社は、自分たちの知らないセル情報をグーグルが把握していて驚いたなんていう話も聞いた。それもなんだか気持ちが悪い。