どこに進むか

これまでのビジネスモデルを持続的に維持することは難しい。しかし、投資家から資金を集め事業を運営している企業体としては、成長し続けることを求められる。いや、すくなくとも、利益をつねに残し、投資した資金が目減りすることが無いよう強いプレッシャーをかけられる。

つまり、新しく進むべき道を決めるためには、明確に2つの制約条件が存在している。それは、「金を使うな」、「短い期間は我慢するが、数年のうちに大きく成長しろ」ということだ。

こういう制約条件は、実はありがたいということを時間が経つにつれ理解できるようになってきた。

というのも、「何でも好きなことをやって儲けろ」と言われ、毎日トイレで思いついたようなアイデアを話し合い、ブレインストーミングだの、会議だのと言いながら1日の多くの時間を費やすことは、いくらでもできる。大きな安定した会社の企画部門なんて、こんなことで時間を過ごす。さらに、実際にモノを作ることができる能力があると、さらに悩みが深くなる。

「アイデアをもってくれば、(リソースがある限り)何でも作るよ」などと、開発側は自分たちの能力に自信があり否定的なことは言わない。企画側としては、「技術的にできない」とでも言ってくれれば、そこで思考停止ができるのに、「できる」と言われれば、ビジネスとして成り立つかの実証を繰り返さなければいけなくなる。そうなると、面白いから考えてみよう・・とは言うものの、おそらく「ビジネスとしては簡単ではない」、「すでに他でやっている」というところに落ち着くのだろうなと思いながら、ネットを短時間でサーチし、「あ、やっぱり」という答えに行き着く。たいていのビジネスが、「何をやるか」に加え、「どうやるか」が重要なのは衆知の事実。しかし、そんな前提でいるので、「どうやるか」までに考えが及ばず、「簡単では無いな」で宙に浮いてしまう。

そんなプロセスを繰り返してきたが、いよいよ決めなければいけない状況に追い込まれた。単純にキャッシュフローのトレンドから、新しいディールが無ければ、X年後やXXヶ月後には資金不足に陥るだろうという計算はそう難しいことではない。この計算結果を見ると、いま仕掛りの案件が取れるなど、1年後のことはわからないだの、基本的にはいままで大丈夫だったのだから、これからも大丈夫のはずという論駁が行われる。しかし、当然のことながら、その残る期間は時間が経つに連れて短くなってくる。そうなると、やがて、あちらこちらから警告が鳴らし始められる。最初は正確なところを報告しろに始まり、分析結果を示せ、やがて、計画を提出せよ、となる。

そして、この計画策定作業を本格的に始めると、2つの制約条件無しには、とても計画など作れないことがよくわかる。つまり、「金はたくさん使えない」、「成長しないと先が無い」。このような制約条件のなかで、誰もが一定の理解を示す計画を考える。そうなると、ここしか結論が無いという方向が見えてくる。それは単純な答えだ。「いまあるものを使おう、そうすれば余計な金は使わなくて済む」。そうして、「いまあるもので売れるものは何か?」と探し始める。(続く)