足を踏み出すための理屈

前回は、現在のビジネスモデルに限界が生じたため、新しい事業領域に進まざるを得ない背景について書いた。新しい事業領域と言っても、ある意味では無限に存在する。たとえば、中国の同僚は日本に来るたびに、いつでもラーメン屋に喜んで通う。昼は当然だが、夜、飲んだあとも、ラーメンでシメようと言う。どうやら、この30年で独自に進化を遂げた日本のラーメンは、中国人にとって、かなり魅力的な食べモノらしい。そして、中国にも日本から進出したラーメン屋はあるが、渋谷あたりの個性豊かな味のラーメンの味には到底適わない。この日本のラーメン展開を中国で行えば、「絶対に」儲かるという。そこまで、自信があるのなら・・・と結構真剣に飲みながら話したりする。

とはいえ、儲かることがわかっているからと言って、何でも良いという訳ではなかろうと、論理的な思考が働く。論理的というよりは根源は実はエモーショナル。「自分たちは、大きな会社ではなく、仲間で集まりベンチャーとして活動している。それは、儲けるためだけではなかろう。何か目標や目指すものがあったはず。儲けは成功の結果としてあとからついてくる」。
というのが、中国のラーメン屋展開に踏み出さない、ひとつの重要な理屈。

そうなると、自分たちは「何を目指していたのか?」という根本的な質問に行き着く。しかし、この質問に対する答えを考え始めるとかなり深みにはまりこむ。おそらく、「あなたは、なんのために生きているのですか?」、「あなたの人生は何を目指しているのですか?」と聞かれていることに近い。

この質問に対する答えを見つけるため方法は、自己啓発の本に多く書かれている。しかし、間違いなく言えることは、万人に共通の正しい答えは存在しない。数式のように、誰もが同じ答えを得ることができるルールは無い。そうなると、何かのきっかけで生まれ育てた思い込みが、その答えのはず。「情報通信革命を起こす」のが目標だなどと語っている人たちのインタビューを見かけるが、本当に最初からそんなことを考えて起業したんですか?と純粋に疑問を持つ。道を進む中で見つけた答えでしょう、「あとづけ」でしょう、と思ってしまう。

こうして、自分たちはどこに向かったらよいのだろうか?と自問自答することから始める。(続く)