知の技法

1994年初版。東京大学教養学部「基礎演習」テキスト。当時、随分と話題になったと記憶している。久々に引っ張り出して読んでみる。

知の技法: 東京大学教養学部「基礎演習」テキスト

知の技法: 東京大学教養学部「基礎演習」テキスト


船曳建夫氏が表現の技術として「表現するに足る議論とは何か」を次のとおり書いている。

他者に向かっての論として立つためには、内容が次の4点のどれかを含んでいるかどうか、が一応の目安となります。

  1. 発見ー新しい現象や事実の「発見」の報告
  2. 発明ーある現象や事実について新しい解釈や説明理論を「発明」することで新たな理解を提示する
  3. 総合・関連ー新旧のさまざまな現象や事実、さまざまな解釈や説明理論、それらを関連させ、総合させることで新たな理解を提示する
  4. 批判・再解釈ー上記の発見、発明、総合・関連についての批判や評価、説明や解析

私たちの日本語は、次々と話題が移っていく軽やかさを芸とする「座談」、また、なにごとかの主題に触れつつ、ある時はそれを遠巻きにしながら書かれた文章である「随筆」という素晴らしいジャンルを生んでいます。

この定義に従えば、昨日書いた発想法に関して論理を展開するのであれば、「表現に足る論理」は上記のなかでは「総合・関連」の構成が軸になろう。なぜなら、発見や発明ということになると、その「発想法でこれだけ得をしました、大金持ちになりました・・」という成果が説得力の強さのカギになってしまう。さすがに「私はこの発想で、こんなに効率良く仕事をしています」が成果では、人を惹きつける力は弱そうだ


この「知の技法」においては論文の準備の仕方についても説明されている。

序盤戦

  • 漠然とした問題設定
  • 関連資料を集める
  • 資料に目を通す、文献リストをつくる
  • ある程度絞られた論文題名を決める

中盤戦

  • 題名にそって資料を検討する
  • 先行研究の整理をする
  • 自分が新たに貢献しうることは何かを検討する
  • 論文題名をさらに絞る
  • 資料の検討、自説の模索、必要に応じて題名の修正

終盤戦

  • 草稿執筆
  • 草稿の検討(ひとにみてもらったり、草稿をもとに発表したりする)
  • 完成稿執筆

企画部門の仕事の進め方と同じだ。