知の技法
1994年初版。東京大学教養学部「基礎演習」テキスト。当時、随分と話題になったと記憶している。久々に引っ張り出して読んでみる。
- 作者: 小林康夫,船曳建夫
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 1994/04/08
- メディア: 単行本
- 購入: 13人 クリック: 176回
- この商品を含むブログ (59件) を見る
船曳建夫氏が表現の技術として「表現するに足る議論とは何か」を次のとおり書いている。
他者に向かっての論として立つためには、内容が次の4点のどれかを含んでいるかどうか、が一応の目安となります。
- 発見ー新しい現象や事実の「発見」の報告
- 発明ーある現象や事実について新しい解釈や説明理論を「発明」することで新たな理解を提示する
- 総合・関連ー新旧のさまざまな現象や事実、さまざまな解釈や説明理論、それらを関連させ、総合させることで新たな理解を提示する
- 批判・再解釈ー上記の発見、発明、総合・関連についての批判や評価、説明や解析
私たちの日本語は、次々と話題が移っていく軽やかさを芸とする「座談」、また、なにごとかの主題に触れつつ、ある時はそれを遠巻きにしながら書かれた文章である「随筆」という素晴らしいジャンルを生んでいます。
この定義に従えば、昨日書いた発想法に関して論理を展開するのであれば、「表現に足る論理」は上記のなかでは「総合・関連」の構成が軸になろう。なぜなら、発見や発明ということになると、その「発想法でこれだけ得をしました、大金持ちになりました・・」という成果が説得力の強さのカギになってしまう。さすがに「私はこの発想で、こんなに効率良く仕事をしています」が成果では、人を惹きつける力は弱そうだ
この「知の技法」においては論文の準備の仕方についても説明されている。
序盤戦
- 漠然とした問題設定
- 関連資料を集める
- 資料に目を通す、文献リストをつくる
- ある程度絞られた論文題名を決める
中盤戦
- 題名にそって資料を検討する
- 先行研究の整理をする
- 自分が新たに貢献しうることは何かを検討する
- 論文題名をさらに絞る
- 資料の検討、自説の模索、必要に応じて題名の修正
終盤戦
- 草稿執筆
- 草稿の検討(ひとにみてもらったり、草稿をもとに発表したりする)
- 完成稿執筆
企画部門の仕事の進め方と同じだ。