びじねすまん、かくあるべし

ビジネス理論といわれるものの多くが、米国のBスクールなどで体系化されているように思いがちだ。たしかに、数多くの書籍が出版され、翻訳されている。日本の多くのビジネス書も読んでいる。これらを書く人々は、自分の体験だけで語るケースはとても少ない。さまざまな本をお勉強して自分なりの理論を体系化しているのであろう。そのため、表現や事例は異なっても根本に流れているメッセージは大差ない。

しかし、この2冊の本は単なるビジネス書とは明らかに違う。というのは、「松下幸之助の教え」だからだ。江口克彦氏の「上司の哲学」と「部下の哲学」。

[新装版]上司の哲学

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[新装版]部下の哲学 成功するビジネスマン20の要諦

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松下幸之助、かく語りき」、という種類の本は多い。また、ネットでも簡単に多くの情報が得られる。ただ、読んでみると、ありがたい格言で、本当に意味していることが染みこまないことが良くある。が、これは違う。松下幸之助に秘書として長く使えた同氏が、翁の発言や行動の意味をとてもわかりやすく語っている。この2冊を読んだときの驚きは、関孝和が西洋にはるかに先駆けて行列式を考案していたと聞いたときと同じだ。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%A2%E5%AD%9D%E5%92%8C

翁が語り、同氏がわれわれに教えていることは、私がこの数年読んだ多くの人や組織に関するビジネス書が教えることと同じメッセージを、あらゆる角度から述べている。米国におけるソフトスキルの研究が進んだのは、1980年代のように思われる。これは、まさに日本が世界に勃興した時期であり、多くの研究者が、日本的な経営システムを研究した時期だ。そのなかで、この松下幸之助もその基礎となっているのだと思う。

わたしが若かりし頃から上司に薫陶いただいた「びじねすまん」道には、自信を持って良いと確信した。欧米型のカタカナ理論がすべて正しいのではない。その本質は、この国のなかに確実に育まれてきた。チームに新しく参加するメンバーが来るたびに、この本のいくつかのページをコピーしてわたしている。部下が立派であれば、上司はその言うことに耳を傾ける度量さえあれば良いからだ。