あちら側とこちら側

 「ウェブ進化論」は、「あちら側」と「こちら側」を対比し、Web2.0の世界を語っている。
「あちら側」は、もちろんGoogleであり、Amazonであり。私は「あちら側」の世界を、「こちら側」から見てきたわけであるが、どうやら梅田望夫氏の語り口のおかげで、「あちら側」の世界に引きずりこまれた。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

 同時に読んだのが、「国家の品格」。実は、これも、「論理」と「情緒と形」を対比している。外資に勤めてきた身として、日々とみに感じていたが、うまく言葉にできなかった概念が的確に表現されている。
これまで、チームに対し、つねに語ってきたことが、「論理的であれ」であった。たしかに、欧米人に対して、日本の事情を理解させるためには、論理的でなければならず、かつ、彼らの理解できる論理を構築しなければならない。それは、例えば、欧米人にとって快い論理に当てはめ、事象や背景を語ることだ。
ただ、それが本質を語っているのかというと、つねづね歯がゆさを感じてきた。真理に至らない以上、その論理にはかけている点があるのだ。日本人の同僚の、「そんなことは当たり前」であるとか、「それはちょっと違うけど・・」、というような反応からも明らかだ。
つまり、言葉の問題もさておき、すべての事象を論理で語ることは無理なのだ。さらに、藤原正彦氏が論じるように、日本は「情緒」の文化である。そのため、これまで本国から投げかけられる「何故、日本市場では、こういうことが起きるのか」という問いに、明確に答えられないのは当然ではなかったか。
しかし、日本が特殊であり、特別であることは恥ずべきことではない。
むしろ、自信を持つべきなのだ。遅ればせながら、この「国家の品格」に気づかされた。

国家の品格 (新潮新書)

国家の品格 (新潮新書)