松井冬子
日曜日の夜。昼間にワインを飲み、そのまま寝てしまい、夜に目がさえ、珍しくテレビを視ていた。チャンネルはNHK教育テレビ。ETV。画面の女性に目が留まる。教育テレビらしからぬ容貌。松井冬子。そのインタビューから目が離せなくなる。
画家、松井冬子(34)。彼女は、昨年女性で東京芸術大学史上初の日本画専攻の博士号を取得、日本画壇のホープと目されている。
彼女の作品には、傷んだ皮膚や内臓、幽霊などが描かれ、一見グロテスクな絵画とも見られる。しかし、その作品が今、美術界内外で注目を集めている。彼女は、死に対する現実感の希薄化、喪失化が現代社会の大きな問題であると捉えている。
日本画の技法を用いて描くのは幽霊や内臓がはみ出した女性。その制作風景は、美しくしてはいるが獲りつかれたよう。身体の中から創作するものが湧き出している。
インタビューの噛みあわないやりとり。インタビューをする芸大の教授や東大の教授は、彼女の作風に異常を感じている。その前提で質問する。過去にトラウマがあるのではないか。復讐や怨念に取り付かれているのではないか。この暗さには特別な意味や理由があるはず。
しかし、彼女は作品の持つ意味を語るが、インタビューアーが期待している異常な物語を語ることは無い。むしろ、創作意欲そのものに突き動かされていると語る。
作品の独創性、その精緻な技術。素人目にも凄さが伝わる。さらに、モデル並みの容貌。論理的な会話。世にでるべくして、登場した。
いつものことだが、さすがはNHK。自分の領域では到底知ることの無い世界を見せてくれる。