バチがあたらない時代

ほんの少し前のこの国。特に、田舎では、家に「鍵」がなかった。平和だったからだ、と言えば簡単だ。実際は、家に盗られるような貴重品自体が無かった。家族全員で出かけて家を空けてしまうことが無かった。つまり、絶対に誰かが留守番をしていた。野菜などの日々必要な物は自給したり、売りにくるので、買い物にも出かけなかった。


ある田舎のお寺。賽銭泥棒が境内に入ってきた。奥さんは、檀家のお詣りと思い、お茶を用意して、のんびり待っていた。いつまでも姿を見せないので、やっと泥棒と気がついた。おそすぎた。泥棒が珍しかったからだ。


いまは、さすがに「鍵」が不要という家は、ほとんど無いだろう。この国が豊かになったことの代償だ。家に贅沢品が山ほどある。それを守ることが必要になっている。自分の安全や安心まで買わなければならない。


豊かだが平和ではない。今後、ますます、そんな世の中になりそうだ。そして、豊かでもなく、平和でもない人生にならないことを強く祈るのみだ。


本当は賽銭を盗んだらバチが当たるはずだ。


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