「会社は誰のものか」にみるわかりやすい「論理」とは

 自分の考えや論理を人に伝えるのは難しい。その原因は2つ。ひとつは、受け手の「ビットがたっていない」。もうひとつは、送り手が「適切に伝えていない」。自分が送り手の場合、受け手の「ビットをたてる」ことはかなり難しい。例えば、会社が誰のものでも良い人にとっては、こういう本は何ら響きはしない。むしろ、本棚の飾りになってしまう。それなら、せめて装丁のデザインでも美しい方がありがたい。

「会社は誰のものか」 吉田望著 新潮新書



 しかし、受け手の準備ができている場合。送り手としては、「適切に伝える」スキルを知っておく必要がある。この本は、論理が非常に明快。この本から、わかりやすい論理を構築する方法について考えてみた。論理を構築する流れは次のとおりだろう。

  • (準備段階として)送り手本人が、日常から、さまざまな事象にビットを立てておく
  • 伝えるべきテーマが決まった(決められた)場合には、ひととおりの情報や、過去に展開されている論理をスキャンしてみる (コンサル用語では、ユニバーサルに見ると言う)
  • チームで仕事を進めている場合は、そこでブレインストーミングをする。個人の場合であれば、可能な限り、多くの人にクイックに意見や見方を聞いてみる
  • バラバラの情報や考え方を分類する。その分類のなかから、事象に共通している本質やドライバー(促進要因)を見つける。それらを選択オプションとする。
  • そのオプションから仮説を構築する
    • 仮説を構築する必要性は多くのビジネス書で語っているとおり。基本は80・20(エイティ・ツゥエンティ)の考え方に基づく。20%の出来事が80%の影響を及ぼしているという経験則だ。昔の商人の世界では二八(にっぱち)の法則とも。これにより、大も小も無関係にすべてを検討してみるという無駄な時間が省ける。これにより、枝葉にとらわれて、大きな幹を見失うことが無くなる
  • 仮説の検証を行う
    • この検証が、受け手の「ビットをたてる」ためのもっとも重要なポイント。ビジネスの世界であれば、財務数値が最後の成果物になることが多い(で、いくら儲かるの?という問いに対する答え)。また、コンセプトのような段階であれば、事例で検証する。例えば、「顧客が・・」、「競争相手が・・」、「技術動向が・・」、「他業界で見れば・・」、「規制が・・」、「この国の歴史では・・」、「この会社の実力では・・・」。
    • 多くのコンサル会社の問題はここにありがち。自分の仮説(往々にして依頼者の仮説)に都合の良い情報だけを引っ張りだして検証してしまう
  • 「仮説」が成り立つ条件を明確にする。逆に、成り立たない可能性をリスクや課題としてあらかじめ定義しておく
    • 残念ながら、どんな時にでも成り立ちうる、絶対に正しいという真理は無い


 さらに多く伝えたいことがあるが、本日はここまで。明後日、「会社は誰のものか」を具体例に解説する