イチローと日本人論

 日本人が特殊や特別であることに誇りをもつべき。「国家の品格」以降、日本人論に関しては「ビットが立っている」JALカード会員むけの情報誌である「Agora」。普段であれば写真にぱらぱらと目を通す程度。しかし、4月号のグレゴリー・クラーク氏の「逆説の日本人論」には深く肯かされた。

小さな集団の中で、感情、感性、グループ意識などを大切にする社会は何ら異常ではありません。日本人は島国として長い間孤立できた歴史のおかげで、その基盤を維持することができたのです。逆に私たち欧米人の大半は、他民族と接触することを余儀なくされました。そのため、家族的、村的、小集団的価値観から、より原理原則、議論、討論、個人主義等々を機能することを強いられた、と。

 
 ただし、日本的なものだけ、旧来の日本の社会システムだけ、が正しいという気持ちも毛頭ない。2006年4月14日の週刊朝日田原総一郎氏が書いている。

小泉首相は、この国にはびこっていた”社会主義体制”を壊した・・・(中略)。誤解を恐れずに言えば、格差をなくしたいのならば、規制を強め、企業間の競争をさせず、不振にあえぐ地方や企業にカネをばらまけばいい。つまり、小さな政府ではなく、大きな政府の時代に社会を逆行させることである

 という警笛はあちらこちらで鳴り始めそうだ。とかく、良いか、悪いかという、1と0のデジタルな議論に陥りがちではある。しかし、われわれの祖父達が経験してきた文化や世の中が、急速に失われていないだろうか。そういう目で最近の風潮を見てみるべきだろう。

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 ささいな例ではあるが、義理の母の兄弟は商売で成功したそうだ。そうすると、お手伝いさんという形で地方の女の子を呼び寄せ、自分の娘のように育て、嫁にだす。良き時代のこの国はそんな国だった。何かの巡り合わせで金持ちになったとしても、それを社会に還元する。お互いが助け合う。この国にはそんなマインドを有した人たちが集まる社会や文化があった。



 このWBCで「愛国心」に目覚めたと言われるイチロー。野球以外の場では知らないが、自分のスタイルに自信を持ち、それを貫き、多様な文化のなかで認められる。この国もそうありたいものだ