リーダシップ

日本企業に居た時は、とても恥ずかしくてリーダーシップなどという言葉は使えなかった。しかし、外資で働くようになり、同じく外資から移ってきた先輩から、「リーダーシップについて語れるか?」と問われた時、答えを失った。明らかだったのは、経験を積んだベテランとして若手に手取り足取り教えることではなさそうだということ。また、ある年齢に達すると窓際に座り、難しい顔をして、文章に赤字で添削することでも無さそうだということだ。

もう十数年も前のビジネススクール時代の本もひっくり返したが、当時は、財務やマーケティング理論というハードスキルが全盛であり、人に関するソフトスキルに関するものは、ほんのわずかしかなかった。また、難しすぎてピンとこない研究本だった。

しかし、最近のビジネス書は随分と充実している。昔は、上司からノウハウ本を読むくらいなら古典を読めと教えられたような記憶がある。しかし、もはや、この分野を軽んじてはいけない。おそらく、この分野が進んだのは、明確なビジネスリーダーが米国で多く出現し、そのサンプルを集め、類型化し、整理し、一般化できる水準にまでに至ったためだろう。かなり多くの本は読んだので、レビューはしていくつもりであるが、ここで紹介する本は人にも贈ったくらいの明快さだ。

駆け出しマネジャー アレックス リーダーシップを学ぶ

駆け出しマネジャー アレックス リーダーシップを学ぶ

そして、リーダーの行動として求められる3つ、すなわち、

(1)ビジョンを語る(Vision
(2)そのビジョンを吹き込む(Inspire)
(3)勢いを維持する(Momentum)

に関しては、多くのほかの本で伝えようとしていることと、突き詰めれば同じメッセージだ。特に、リーダーシップが、ビジョンに始まることを軽視しているものは、まず見当たらない。そして、何人かの欧米の優れたリーダー達を身近に見てきたが、確実にこの3つを実践している。特に重要なのが、ビジョンを繰り返し、しつこく語り、3ヶ月もしたら飽きてしまう社員たちが最初の勢いを維持し続けられるよう、さまざまなかたちでコミュニケーションをとり続けることだ。

加賀山卓郎氏が最近翻訳したのは、

最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと

最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと

この本には数多くのケースが紹介されている。間違いなく言えるのは、リーダーシップにおける天性が果たす役割はごく一部であるということだ。人は混沌とした状態を不安に感じる。ある程度合理的な方向性であれば、それに喜んで従う生き物らしい。そして、あとは、リーダーシップをとる人間がしつこいことであるとか、あきらめないことだと多くの事例も示している。日本のインターネットや通信業界も、業界の姿を変えているのは、このタイプであることは誰も否定しないと思う。